数時間後、いよいよパラグアイ戦のキックオフを迎える。気持ちが高まるばかりで、落ち着かない。
四半世紀前のことが、走馬灯のように頭の中をよぎっている。思い出されるのは、僕自身が日本サッカーのプロ化に向けた活動をいろいろな人々としていた頃のことだ。アマチュアからプロへ、それには、筆舌に表すことのできないほど大きなエネルギーを必要とした。プロ化の一番大きな目標は、日本代表をワールドカップに出場させることであった。Jリーグも誕生して、人間に例えると成人式間近にならんばかりまでに成長を遂げてきた。プロ化に携わった人々は、僕と同じようにベスト8を狙うパラグアイ戦のキックオフを感慨深く迎えつつあるものと思う。そして、日本代表が美しく進化して欲しいと思わずにはいられない。
以前、ブラジル人の友人と次のような会話をしたことが思い出される。ブラジルは、真の意味でサッカーのプロ化を実現したのが1937年頃のこと。13年後の1950年、ブラジルはワールドカップを自国開催し、悔しい準優勝に終わった。そして、その後、8年の年月を経て、1958年、スウェーデン大会で初優勝を成し遂げた。ペレがワールドカップにデビューし、サンバ・サッカーが世界を席巻した時代である。前述のブラジル人の友人は僕に、「ブラジルだって、ワールドカップ優勝まで20年ほどかかっているんですよ」と語っていた。
いろいろと啓蒙を受けているジャーナリスト、賀川浩氏と歓談した際、僕は同様なことを日本代表が成し遂げたことを教えて頂いた。日本サッカー協会の設立は1921年、日本代表は15年後のベルリン・オリンピックで優勝候補のスウェーデンに勝っていると。
ブラジル人の友人も賀川氏も、日本代表が南アフリカのワールドカップで大躍進するかもしれないことを密かに期待していたのかもしれない。
今大会が始まって、高地対策の気圧問題や公式球ジャブラニの影響から、キックの精度が取りざたされている。これに関しては、いろいろな友人からの質問に、ボールには慣れてくると答えていた。日本代表は、大会全体のFKからの得点の三分の二を決めている。南米のチームの好調さについては、南米予選ではボリビア、コロンビア、エクアドルと戦う時は南アフリカの海抜よりも更に高地である。高地対策に、敏感になっていなかった。ブラジルもアルゼンチンも、本国でのミニ合宿後いち早く南アフリカ入りをしている。しかも、好調である。
レベルの高い個人技と組織力を発揮して、オランダもドイツも素晴らしいゲームを展開している。攻撃的か守備的かの差異は存在するが、今大会でのアルゼンチンの攻撃力に注目している。メッシを始め、攻撃陣にタレントが多すぎるほどいるからだ。しかし、僕の私見では、最もバランスが取れて”美しく進化”しているチームはセレソン、ブラジル代表のように思えてならない。現在、セレソン(Seleção)はペンタ・カンぺオン(Penta Campeão)、ワールドカップで5度も優勝している。今大会、セレソンは エキサ(Hexa Campeão)になるべく宿命を背負って戦っている。それは、2014年、2度目のワールドカップ自国開催を更に盛り上げるために、エプタ(Hepta Campeão)、7度目の優勝の道しるべとするべく南アフリカにいるように思えてならないからである。パラグアイとの試合結果をポジティブなものにしてくれると信じてサムライブルーに大いに期待することは当然として、そして、次回2014年大会、5度目の出場にも更なる高い希望を抱きたい。
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