「入場券の価値」
定期的に連絡を取り合っているカタールのクラブでコーチをしているアウミールから、インターネット電話が入った。以前から聞いていたが、来月、11月17日、20時にドーハのカリーファ・インターナショナル・スタジアム(Khalifa International Stadium)で行われる世界中が注目する国際親善試合、ブラジル代表とアルゼンチン代表のチケットを入手したことを告げるものであった。指定席で、日本円で3,000円ほどのものであった。当日は、奥さんと娘さんを連れて観戦すると嬉しそうに入手した入場券を映像で見せてくれた。当日は、50,000人の大観衆でスタジアムは埋まるはずである。
ふと、感じたことがあった。ブラジル国内でもセレソンの試合は観ることができるが、国土が広すぎて、しかも、人気があることから、常に、セレソンの試合をスタジアムで直接、観戦する機会が少ないと気が付いたのである。27州で構成されているブラジル連邦共和国、各州に代表の試合を行えるサッカー場はいくつもある。CBF(ブラジル・サッカー連盟)は、その都度、各州のサッカー連盟と提携し試合のスケジュール、運営を決定している。
ワールドカップを開催する2014年の開催地は概ね決定しているものの、スタジアムが決まっていない開催州もある。日本と異なり、地域とクラブの密接度は極めて強固で深い。どのスタジアムで開催されるのかによっては、サポーターも含めたプライドの争いもある。
パラナ州で生まれ育ったアウミールは、コリチーバFC(Coritiba FC)でキャリアをスタートし、アトレチコ・パラナエンセ(Atletico Paranaense)の在籍年数が多かった。ドイツ人移民がサッカーを紹介し盛んになった州都、クリチーバ(Curitiba)市は、ドイツ系、イタリア系、スペイン系、ポーランド系などのヨーロッパからの移民が多く、文教都市として落ち着いた風情の都市である。
パラナエンエ(パラナ州人)からすれば、サンパウロやリオデジャネイロに比べてみると国際試合を観戦する機会は少なかったのではないかと、ふと思ったのである。それが、母国から遠く離れた中東のカタール、ドーハでセレソンの試合を観ることができるのである。しかも、相手は永遠のライバル、アルゼンチン。幼馴染のセレソンのフィジカルコーチ、カルリーニョス・ネーヴェス(Carlinhos Neves)との再会も、より楽しみを増大しているようである。親しいラジオ局所属のジャーナリストも、アウミール宅にホームステイをするという。
どのようなひとにとっても、特別な試合があると思う。以前、天候不順で観客がひとりというフラメンゴのホームゲームがあったことを思い出した。有料入場者数、1人とクラブは公表した。恥ずかしいことと受け止めるのではなく、感謝の意味を込めて、1人と発表した。そして、クラブは、会長を含めたフロント、監督を含めた選手たち現場の全員で、その観客にシーズンチケットをプレゼントしたとのことであった。試合を観る価値を、多くの人々が知って観戦することでチームは強くなると思いたい。ドーハでの試合は、カタール在住の多くのブラジル人が、セレソンの後押しをすると、僕には思われてならない。
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