「ナビスコカップ決勝」
大方の予想に反して得点を取り合う死闘が展開されて、ジュビロ磐田が12年ぶりに2回目の優勝を飾った。カップ戦の決勝というものは、タイトル欲しさに守備的になりがちになるのが趨勢であると思っていた。ところが、磐田もサンフレッチェ広島も得点することに貪欲で勝利に対するモチベーションを素晴らしく見せていたと思う。延長戦での得失点の多さは疲労なども加わって仕方ないと思うが、アグレッシブでオフェンシブに戦っての5対3というスコアは深い印象を付けて歴史に残るものと思う。
僕は、どの選手がどうのこうのという言い方はしたくないが、MVPに輝いた前田遼一選手や槙野智章選手、李忠成選手などの攻撃的なセンスがザッケローニ・ジャパンに光明をもたらしたと思えてならない。前田選手のふところの広さや抜け方、槙野選手や李選手のアグレッシブなところについても、それぞれのボールタッチの巧みさが見られたと思えたからである。
決勝戦でこれほど得点が入ることは珍しいと思っていたところ、カタールでコーチをしているアウミール・ドミンゲスからインターネットでのテレビ連絡が入った。試合の結果が気になっていたからであるが、自然に、お互いがナビスコカップを最初に獲得した時代の思い出話になっていった。僕は、ヴェルディ時代の第一回ナビスコカップ優勝の時を思い出していた。ラモス、加藤久、柱谷哲二、戸塚哲也、都並敏史、ペレイラ、武田修弘、菊池新吉、ダヴィ、三浦知良ら選手とペペ監督との1992年を。アウミールは、セバスチャン・ラザローニ監督のGKコーチとして横浜FMが2001年にタイトルを獲得した頃を懐かしんだ。
ヴェルディがタイトルを監督した時のMVPは、清水エスパルスを相手に唯一のゴールを決めた”カズ”であった。とても素晴らしい瞬間を皆と共有できたことを、忘れることはない。そして、アウミールにとっては、より大きな喜びと思い出があったという。2001年の決勝の相手は、今回、優勝したジュビロ磐田。スコアレスでの延長戦を終え、PK戦になった。アウミールの教え子のひとりである榎本達也選手(現在、ヴィッセル神戸)が素晴らしい守備のパフォーマンスを披露し、PK戦では磐田の最後のキッカー、前田遼一選手のPKを止めて優勝に導き、MVPに輝いたという。
榎本選手がPKを止めて優勝を成し遂げた瞬間、榎本選手とアウミールはピッチ上で嬉しさの余り抱き合ったという。そのシーンを、マリノスの女性ファンが写真に収めていて、後日、額に入れてプレゼントしてくれたことをアウミールは伝えてくれた。今でも、ブラジルの家には壁に飾っているとのことである。
ジュビロ(Júbilo)は、ポルトガル語での意味で”歓喜”通り、タイトルを獲得して栄光を勝ち取った。代表の駒野選手を怪我で欠いたり、シーズン序盤の不振を跳ね返した磐田は例外でも特別でもなく、意志のあるチーム、監督、選手が結果を作っていると思いたい。残りのシーズン、J1、J2の戦いぶりに、より興味を感じさせる好ゲームを磐田と広島は見せてくれたと思う。それは、国立競技場に詰めかけたサポーターとテレビの前で観戦したファンが感じていると思われるからである。
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コメント
こんな試合が増えるとサッカーファンも自然に増えますね!
投稿: Danny | 2010年11月 3日 (水) 21時34分