僕が知る限り、クリスマスから年始にかけてサッカーの公式戦が行われている国は、日本とイングランドくらいではないかと思う。イングランドでは、リーグ戦を元旦に行うこともある。クリスマスを迎えて世界中で、ヨーロッパはウィンターブレークに入り暫く公式戦は中断されるし、南米ではJリーグと同じようなシーズンを送っているので、天皇杯や全日本女子選手権などのカップ戦の優勝チームを年末年始に決定する国は日本だけではないかと思っている。
天皇杯は、1921年から開催され、今年で90回。戦争で中止になったこともあるが、三連覇したチームは歴史上、ひとつもない。ガンバ大阪が、その歴史を変える挑戦をしていて興味深い。一方、ACLの出場権をJリーグ4位で逃してしまった鹿島アントラーズが天皇杯に優勝して出場権の獲得を狙う挑戦も、また、面白い。そして、J2への降格が決まっているFC東京が、初めての天皇杯獲得に挑戦することにも関心を持つひとは多いかもしれない。天皇杯準決勝は、12月29日に行われる。僕の拙い経験からすると、準決勝で敗戦した場合、とてつもなく暗く落ち込んだ気持ちで新年を迎える心境になってしまいがちであると思っている。表現や真理からすればおかしなことであると思いつつ、僕は、準決勝の持つ重みを感じて仕方がない。悪しき場合、決勝で負けても落ち込むことはなく達成感を抱くこともあると思うのに、準決勝で大会から消えてしまうことの寂寥感は筆舌に尽くし難いと感じてきた。
全日本女子選手権は、天皇杯決勝の前座試合的に行われるようになった。元旦の決勝は、どちらも初優勝を狙うチーム同士のカードとなった。INAC神戸レオネッサと浦和レッドダイヤモンズ・レディース。男子のプロのような激しさやスピードなどと比較すると、面白味を感じられないひともいるかもしれない。しかし、女子サッカーとしてのレベルでは、男子よりも遥かにFIFAランキングも高いポジションで強豪国のひとつとして”なでしこ・ジャパン”は世界的に評価を得ている。その代表チームを支えている”なでしこリーグ”のトップチームが対戦する全日本女子選手権も、大いに関心を持たれて良い価値のある試合であると思う。
僕もスタッフとして、天皇杯決勝の舞台を多く経験できたし、優勝の素晴らしさを体験できたが、毎年、この時期になると、ブラジル人の親友のキツイ言葉に触れざるを得ない。ジョゼ・オスカー・ベルナルディ(José Oscar Bernardi)の存在である。オスカーが日産自動車(現在の横浜Fマリノス)の選手時代、僕が所属していた読売サッカークラブは長居競技場で対戦した。僕もベンチに座っていたが、オスカーは延長に入った際、普段と異なるプレーで決勝ゴールをヘディングで決めてしまった。オスカーは、セットプレーの際、ファーポストに入ることが多かったが、マーク役のラモスを欺いてニアーにポジションを変えてしまったのである。僕も、チームも、落ち込んで新年を迎えてしまったが、親友であるオスカーは、いつも、この時期になるとこの試合の話をしてくる。悔しいことではあるが、懐かしくもあり、当時の嫌らしい敵が今は親友となっていることが楽しくてならない。僕と同じような経験をする人々もいるかもしれないと思うと、年末年始の公式戦も楽しみたいと思う。
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