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2010年12月

「日本独特の年末年始の風物詩カップ戦」

2010/12/26(日)

 僕が知る限り、クリスマスから年始にかけてサッカーの公式戦が行われている国は、日本とイングランドくらいではないかと思う。イングランドでは、リーグ戦を元旦に行うこともある。クリスマスを迎えて世界中で、ヨーロッパはウィンターブレークに入り暫く公式戦は中断されるし、南米ではJリーグと同じようなシーズンを送っているので、天皇杯や全日本女子選手権などのカップ戦の優勝チームを年末年始に決定する国は日本だけではないかと思っている。

 天皇杯は、1921年から開催され、今年で90回。戦争で中止になったこともあるが、三連覇したチームは歴史上、ひとつもない。ガンバ大阪が、その歴史を変える挑戦をしていて興味深い。一方、ACLの出場権をJリーグ4位で逃してしまった鹿島アントラーズが天皇杯に優勝して出場権の獲得を狙う挑戦も、また、面白い。そして、J2への降格が決まっているFC東京が、初めての天皇杯獲得に挑戦することにも関心を持つひとは多いかもしれない。天皇杯準決勝は、1229日に行われる。僕の拙い経験からすると、準決勝で敗戦した場合、とてつもなく暗く落ち込んだ気持ちで新年を迎える心境になってしまいがちであると思っている。表現や真理からすればおかしなことであると思いつつ、僕は、準決勝の持つ重みを感じて仕方がない。悪しき場合、決勝で負けても落ち込むことはなく達成感を抱くこともあると思うのに、準決勝で大会から消えてしまうことの寂寥感は筆舌に尽くし難いと感じてきた。

 全日本女子選手権は、天皇杯決勝の前座試合的に行われるようになった。元旦の決勝は、どちらも初優勝を狙うチーム同士のカードとなった。INAC神戸レオネッサと浦和レッドダイヤモンズ・レディース。男子のプロのような激しさやスピードなどと比較すると、面白味を感じられないひともいるかもしれない。しかし、女子サッカーとしてのレベルでは、男子よりも遥かにFIFAランキングも高いポジションで強豪国のひとつとしてなでしこ・ジャパンは世界的に評価を得ている。その代表チームを支えているなでしこリーグのトップチームが対戦する全日本女子選手権も、大いに関心を持たれて良い価値のある試合であると思う。

 僕もスタッフとして、天皇杯決勝の舞台を多く経験できたし、優勝の素晴らしさを体験できたが、毎年、この時期になると、ブラジル人の親友のキツイ言葉に触れざるを得ない。ジョゼ・オスカー・ベルナルディ(José Oscar Bernardi)の存在である。オスカーが日産自動車(現在の横浜Fマリノス)の選手時代、僕が所属していた読売サッカークラブは長居競技場で対戦した。僕もベンチに座っていたが、オスカーは延長に入った際、普段と異なるプレーで決勝ゴールをヘディングで決めてしまった。オスカーは、セットプレーの際、ファーポストに入ることが多かったが、マーク役のラモスを欺いてニアーにポジションを変えてしまったのである。僕も、チームも、落ち込んで新年を迎えてしまったが、親友であるオスカーは、いつも、この時期になるとこの試合の話をしてくる。悔しいことではあるが、懐かしくもあり、当時の嫌らしい敵が今は親友となっていることが楽しくてならない。僕と同じような経験をする人々もいるかもしれないと思うと、年末年始の公式戦も楽しみたいと思う。

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「2010 FIFA クラブ・ワールドカップ決勝」

2010/12/18(土)

UAE(アラブ首長国連邦)で行われているクラブ・ワールドカップ、Jリーグのクラブが出場していないこともあってか、僕の周りの友人、知人もいまひとつ感心が薄いようである。来年は、日本で開催されることになっているし、日本のクラブが出場できれば盛り上がるものと期待したいが。

日本のクラブは出場していないが、決勝戦の主審が西村雄一氏、副審を相楽亨氏と名木利幸氏が務めることになって、興味を持ち始めた人は多いかもしれないと思った。

大会開幕前から、僕も興味のある周囲の人々もヨーロッパ対南米の決勝になると安易に考えていた。インターナショナルな名門クラブ同士の対決は、言語の違いはあっても同じ意味合いを持っている。イタリアのインテル・ミラノFC Internazionale Milano(インテルナチョナーレ・ミラノ)、ブラジルのインテルSport Club Internacional de Porto Alegre(インテルナショナウ・ジ・ポルトアレグリ)、前者が1908年、後者が1909年創立と素晴らしい歴史と栄光を築いてきて類似性は面白い。

僕も、インテル同士の決勝戦を期待していた。どちらのクラブにもアルゼンチン選手がいるし、インテル・ミラノにはブラジル選手も多くプレーしている点も興味深いものであった。

しかし、今大会は、歴史を変えるクラブが出現した。アフリカのコンゴ民主共和国のゼンベ(TP Mazembe)である。ブラジルやアルゼンチンのクラブも難敵と認めているメキシコのクルー・デ・フッテボル・パチューカ(Club de Futebol Pachuca)を相手に、初戦を勝ち抜いた。パチューカはスペインのFCバルセロナと同様、下部組織の育成が素晴しく多くの選手がトップチームへ昇格しポテンシャルが高いことで知られてもいる。マゼンベはパチューカに勝てたことで、勢いに乗れたと思う。

マゼンベは、準決勝で優勝候補のインテルナショナウに20で勝利するという素晴らしい結果を残した。ヨーロッパ、南米以外のクラブが、初めてファイナリストになれた。34才のGK、キディアバ(Muteba Kidiaba)は、信じられないようなゴールキーピングを見せている。我々の背後には、すべてのアフリカがいる。と、アフリカ人としてのプライドを自信に満ちてコメントしている。自チームの得点に、勝利した時に見せるお尻ダンスは、世界中で、パフォーマンス同様、或いは、それ以上に有名になってしまった。

インテルナショナウがマゼンベに敗退した際、僕は、国内外のブラジル人とこの試合の話をした。マゼンベが勝って当然の試合内容であると、彼らは認めていた。そして、インテルナショナウの監督も選手も準備に怠りはなかったが、決定力の差が勝負を左右したとコメントしている。マゼンベの決定力は、世界中が認めていることと思う。

インテルナチョナーレも決定力を見せて、決勝に進出してきた。僕は、どちらが優勝するとしてもおかしくないと思う。そして、もうひとつ興味を抱いていることがある。同世代の監督としての、覇権争いである。世界的に知られたスペイン人のラファエル・ベニテス(Rafael Benitez)DF出身でイタリアのクラブを率い、FW出身のセネガル人、ラミーヌ・ンディアエ(Lamine N’Diaye)がコンゴ民主共和国のクラブを率いているからである。ピッチ内外の決定力が、優勝を決めるであろうことに興味が尽きない。

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「フルミネンセが優勝」

2010/12/09(木)

 

 Jリーグが終幕した日、ヴィッセル神戸が奇跡的な残留を決め、FC東京がJ2への降格となった。その翌日、ブラジルでは、ブラジル選手権(Campeonato Brasileiro Seria A)の優勝チームが、リオデジャネイロの名門、フルミネンセFC(Fluminense FC)に決まった。サンパウロ市のコリンチャンス、ベロ・オリゾンチ市のクルゼイロと最終節までもつれてはいたが、最終戦も勝利して26年振りのタイトルを獲得した。

 日本のファンには親しみのあるヴェルディとレッズでプレーしたワシントン、フロンターレ、コンサドーレ、レッズでプレーしたエジミウソン、そして、ポルトガル代表で活躍したデコのいるチームであって、興味を抱いていたひとも多いかもしれない。古くは、セルジオ越後氏とコリンチャンス時代にレギュラー争いをしたブラジル代表であったホベルト・ヒベリーノ(ロベルト・リベリーノ、元エスパルスの監督)氏が、フルミネンセにタイトルをもたらしたこともあった。

 しかしながら、僕にとっては、親しい人物と気になる選手がいて、違ったアングルで注目し続けていた。監督のムリシー・ハマーリョ(Muricy Ramalho)氏はサンパウロFCの監督時代、僕がヴェルディ時代に契約したアモローゾとともにトヨタカップを制している。読売クラブで一緒であったミウトン・クルスはハマーリョのヘッドコーチを務めていた。僕がブラジルに出掛けた時は、いつもハマーリョと会っていたこともあって親近感を持ち続けている。ハマーリョは、ブラジル選手権で4回も最優秀監督賞を受賞しているが、今年は5回目の受賞が確実であると思う。

 気になる選手とは、コンカ(Dario Leonardo Conca)である。アルゼンチン代表候補でしかないが、左利きで167cm58kgの小柄なMFは、攻撃的なセンス抜群のプレイメーカーであって、フルミネンセの優勝の立役者であると思っている。僕がブラジル滞在中に多くの試合を観戦していた時、コンカのスピード溢れるドリブルやテクニック、得点能力の素晴らしさを常に魅せてくれていて、ヨーロッパでも或いは代表でも十分に通用する選手であると印象付けられていたからである。今季、ブラジル選手権38試合のすべてに出場し、9得点19アシストを記録した。警告も2回しかなく、退場もない。チームへの貢献度については、申し分のない活躍ぶりであったと思う。

 フルミネンセは、来季のコパ・リべルタドーレスに出場する。タイトルを取れば、クラブ・ワールドカップでその雄姿を見られるはずである。楽しみで、仕方がない。一方、小柄な日本人選手、香川真司がドイツを中心にヨーロッパで素晴らしい活躍とともに大きな注目を浴びている。コンカは27才、いつの日か、コンカと香川のオフェンシブMFの対戦を見たいと思うのは僕だけではないと思いたい。

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