昨年の南アフリカで開催されたワールドカップで日本中が熱狂に沸いた当時に匹敵するような盛り上がりを見せて、日本代表、サムライブルーがアジアカップ決勝に進出した。連日、テレビ始めその他のメディアも、サムライブルーの取り上げ方はワールドカップ並に思える。ワールドカップに比べて、テレビ観戦することについては過酷な時差の問題はないし、大方の人々は自宅にいる時間帯であることも優位に働いているものと思う。
ザッケローニ監督になって、サムライブルーは強豪アルゼンチン、韓国との親善試合を含めて無敗できていることもファンの気持ちをポジティブなものにしてくれている。選手たちに気持ち良くプレーさせて、尚且つ、厚い信頼を寄せてチーム作りをしている。偏った表現が許されるならば、カタールでの合宿中にアジアカップ参加と言っても過言ではないと思う。そうした中、事前に強化試合を組めなかった点や日本国内の選手にとってはこの時期の公式大会でのコンディショニングにも難しさがあるものの、ザッケローニ監督が語る成長ぶりが見えていて頼もしい。
準決勝、日韓戦はヨーロッパのクラブでレギュラーとしてプレーする選手が両チームにいて高いレベルの試合内容であったと思う。そして、韓国に勝てたことは、とても重要である。決勝戦も同様なことが言えるが、残念ながら、負傷で離脱した香川を欠くことになっても、長友、本田、長谷部らヨーロッパ組のクォーリティの高さを見せ続けていて、とても楽しみである。
ザッケローニ監督は、日韓戦をイタリア対ドイツの試合のようであると形容し、重厚に捉えていた。そして、決勝戦は日本対オーストラリアという戦いと、監督対決としては奇しくもイタリア対ドイツの一面もある。オーストラリア代表、サッカールーズの監督のオジェック氏もドイツ人としてイタリア人を意識しているかもしれないと感じてしまった。
このふたりのイタリア人監督とドイツ人監督には、共通点も多いと思う。選手キャリアは、恵まれていなかった。コーチ業に、早くから携わった。理論をベースにチーム作りをし、大口を叩くことはなく慎重な発言をする。そして、選手を信頼すると常々発言し、コミュニケーションを大切にする。サッカーだけに限らないことではあるものの、リスペクトする気持ちが自然に伝わってくる。
相違点としては、ザッケローニ氏は、イタリア・セリアAの名門クラブでの経験はあるものの代表チームを率いることが初めて。しかも、アジアのサッカーを体験し始めたばかりであること。そして、通訳を必要としていること。一方、オジェック氏は、西ドイツ代表コーチとしてワールドカップ・イタリア大会で優勝を経験し、カナダ代表を北中米でチャンピオンにしコンフェデレーション・カップまで導いている。FIFAの技師術委員長を務めたりして、分析能力も高い。しかも、選手たちとは英語でコミュニケーションが図れ、通訳は要らない。増して、浦和レッズで2度の監督経験がアジアのサッカーも、増して、日本のサッカーをも熟知している。過去の経験の差異は別として、このふたりの監督としての対決に関しても、戦術以外に、選手にどのようにモチベーションと平常心を与え能力を発揮させるのか等々興味が尽きることはない。
日本代表は、2015年アジアカップのシード権を獲得してワールドカップ予選のスケジュールにアジアカップ予選がなくなり余裕ができた。しかし、オーストラリアも同様である。この決勝戦は、アジアNO1の座を賭けた戦いだけではなく、2014年ブラジル・ワールドカップ前年のやはりブラジルで開催されるコンフェデレーション・カップの出場権を獲得する戦いでもある。多くの人々が、決勝戦を待ち遠しく感じているに違いない。
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