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2011年7月

「R10の日」

2011/07/28(木)

 なでしこジャパンのワールドカップ初優勝の歴史的快挙に、未だに日本国中ではフィーバーが冷めない日々が続いている。帰国して間もなくのなでしこリーグの観客数の多さには、驚かされているとしか表現の仕方が見つからない程である。平均的なJリーグの試合観客数を超える状況は、一過性ではなく、これから、なでしこを目指す多くの少女たちが出現することを期待したいと思う。

 一方、コパ・アメリカは、ウルグアイが最多の15回目の優勝で幕を閉じた。決勝戦でのLa Celeste(ラ・セレステ)は、昨年の南アフリカでのワールドカップでの活躍、実力が事実であることを証明した。大会の最優秀選手となったルイス・スアレスとワールドカップで最優秀選手となっていたディエゴ・フォルランは、世界最高の2トップとも言えるのではないかと思うほど素晴らしいパフォーマンスであったと思う。

 なでしこジャパンは凱旋帰国から国内の人気の的であるが、ウルグアイの盛り上がりも凄まじい。空港に空前のファンの数が詰めかけたし、センテナリオ・スタジアムには、未明の時間にも拘わらず数万の国民が優勝報告を見届けるために参集したとの報道もあった。

 なでしこは、日本人女性がサッカーを行うに適した技術とバルセロナばりのポゼッション、パスワークの戦術、パフォーマンスが徹底されていたと思う。ウルグアイもまた、伝統的な堅守をベースにカウンターアタックが功を奏していた。そして、共通していたことは、諦めないという強い精神力が前提にあったと思う。そして、チームに、一体感があった。

 ウルグアイは、U-20が先のU-20南米選手権で84年振りのオリンピック出場権を獲得しているし、今月末からコロンビアで開幕するFIFA U-20ワールドカップでも期待されている。今年、メキシコで行われたU-17FIFAワールドカップでも準優勝して、若年層の強化、育成が上手く進んでいる。日本も、ウルグアイが成果を見せ始めたように、男女合わせて成果を高めて欲しいと思う。

 ブラジル代表は、チームが若手選手への切り替えもあり過渡期にあるものと思われる。コパ・アメリカでの決定力のなさや戦い方に、僕の周囲の人々は、こんなのブラジル代表ではないと嘆くひとが多かった。しかし、内容の良い試合は少なかったが、タレントは多く、そして、チームは、熟成までの時間を必要であると思っている。

 そうした状況の中、Campeonato Barsileiro(ブラジル選手権)12節で、歴史に残る激闘が展開された。727日、サントス市にあるヴィラ・ベルミーロで、サントスFCはフラメンゴと対戦した。サントスは、前半半ばで3-0のリード。しかし、ここからドラマは始まった。フラメンゴは、前半終了までに3点のハンデを跳ね返した。後半早々ネイマールの得点でリードを許すが、終わってみればフラメンゴが5-4と素晴らしい逆転勝ちを収めたのである。サントスFCのネイマールはドリブル、パス、シュートで2得点、そして、ゲームをクリエイトした。輝きのあるパフォーマンスは、サポーターを魅了した。しかし、”R10”フラメンゴのホナウジーニョ・ガウショが、今季のフラメンゴで最高のプレーを見せた。バルセロナ時代のジャンプをした相手DFの作る壁の足元を狙うグランダーのFKで、サントス・サポーターを沈黙させてしまったしハットトリックを成し遂げてしまったのである。活躍したはずのネイマールも、試合後、R10は天才であるとコメントしている。ブラジルらしい攻撃的なサッカーが戻ってきた記憶に残る試合となって、ブラジルは再び自信を取り戻し始めた。なでしこやサムライブルーに注目しながらも、810日、セレソンの親善試合、ドイツ代表戦も楽しみにしたい。

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「新たな歴史と感動」

2011/07/15(金)

 FIFA女子ワールドカップでのなでしこジャパンの快挙の連続で、日本中が歓喜と更なる期待を迎えている。海外のメディア、ファンからも、”Nadeshiko”のファンタスティックな試合展開に驚異と称賛の嵐であるほどである。過去、一度も勝ったことのない世界の女王、アメリカとの決勝戦は、日本のみならず世界中のファンの注目を集めることは間違いない。

 多くのひとが、なでしこのメンバーを熟知していた訳ではない。しかし、澤主将を筆頭に、川澄、丸山、宮間、大野など現在、国内でプレーしている選手たちの活躍も見事である。そうした中で、左サイドバックの鮫島彩選手のパフォーマンスに極めて大きな期待を持っている。震災の影響を見事に跳ね返し、スピード溢れるプレーを魅せ続けている。しかし、速さや正確なキックもさることながら、冷静で攻守のバランスが取れているところが素晴らしいと感じている。

 アルゼンチンで行われているコパ・アメリカも、いよいよ、決勝トーナメント。アルゼンチンは、予選リーグ最終戦、コスタリカ戦で、漸く、メッシが輝き始めた。バルセロナでプレーしているポジションにバチスタ監督がメッシを戻したことにより、メッシはより優雅にドリブル突破やスルーパスを出し続け、得点チャンスの起点になり出している。1978年のアルゼンチンでのワールドカップは、優勝と得点になったマリオ・アルベルト・ケンぺスがエル・マタドール(El Matador)”として大活躍した。最近、そのケンぺスが取材を受けて、次のようにコメントしている。アルゼンチンは良くなりだした。そして、メッシは本来の能力を見せ始めている。メッシは、マラドーナやアルフレッド・ディ・ステファーノのレベルに到達しているようかのようだ。

 一方、ブラジルも最終戦で決勝トーナメント進出を決めた。アルゼンチン同様、期待を裏切る結果と内容で二試合引き分けであった。そして、エクアドル戦、4-2で勝利し準々決勝進出を果たした。レアル・マドリーに移籍が決定しかけていると報道されているネイマールが、やっと2得点を挙げた。ガンソからのスルーパスを受けたゴールも素晴らしかったが、右サイドバックの長友のチームメート、マイコンのスピード、判断、キックの精度素の高さからの2点目をとても素晴らしく感じた。マーノ・メネゼス監督は、まだ攻撃が功を奏していないし守備でのミスをあって、パラグアイ戦での戦術面での強化をコメントしている。

 なでしこジャパンが決勝でアメリカと戦っている同時刻、ブラジルはパラグアイと、そして、その半日前には、アルゼンチンとウルグアイが激突している。マイコンのような活躍を鮫島選手に期待しつつ、シンプルで速さのある試合を仕掛けて来るであろうアメリカに対して、今まで通りのなでしこサッカーを展開でき、中盤での支配、世界中がマジックとも称しているパス回し、前線の裏への展開などができれば勝機のある試合と見るひとは多いと思う。

そうした状況を想像するに、アメリカとの両サイドの攻防で優勢に勧められた時、なでしこと日本に至福が訪れるように思うひとも多い筈であると感じている。

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「コパ・アメリカ開幕」

2011/07/02(土)

  アルゼンチンで開催されているコパ・アメリカが、地元の大きな期待を受けてアルゼンチンがボリビアと対戦した。初戦ということで、流石のアルゼンチンも引き分けに持ち込むことが精一杯であった印象である。メッシが目立たない。南米のメディアは、これがメッシかという論調が主流である。確かに、サネッティの胸パスからのアグエロのボレーシュートによるゴールは美しかったが。結果に満足はできないかもしれないが、アルゼンチンは決勝トーナメントには進出することは間違いないと思う。

 ボリビアの堅守と大健闘は、称賛に値するものと思う。そして、ゴールを挙げたロハス(エジバルド・ロハス・エルモーサ、Edivaldo Rojas Hermoza)に、ボリビア人選手とは異なった感性を抱いた。ロハスは、ポルトガルの一部リーグのナバル(Naval)でプレーしているボリビア国籍の選手である。ブラジル生まれでアトレチコ・パラナエンセからキャリアをスタートしたが、母親がボリビア人ということもあって今年、帰化してボリビア代表入りした。アルゼンチン戦で、ロハスは4試合で2得点とボリビア代表に貢献している。そして、面白いことに、ロハスが所属するナバルの監督がフラメンゴやベンフィカ、セレソンで活躍し鹿島アントラーズでプレーしたことのあるモゼール(Mozer)であることも興味深い。

 ブラジルのメディアは、本来ブラジル人のロハスの活躍を大きく報道している。ボリビアがアルゼンチンを破壊したヒーローのひとりとして、称えている。

 友人で、現在、リオデジャネイロのボタフォゴのコーチをしているアウミール(Almir domiguez )としばしば交信をしている。彼はコパ・アメリカの優勝候補として、アルゼンチンが45%、ブラジルが35%、ウルグアイとパラグアイで20%と、僕と話をしていて意見を伝えてくれた。僕も似たような予想である。ブラジル代表、セレソンの監督、マーノ・メネゼスもアルゼンチンを優勝候補の筆頭に挙げていることも、妥当な見解であると思う。

 アルゼンチンが調子を上げてきて、ブラジルやウルグアイとのタイトル争いに興味は尽きないが、僕はタイトル争いとは別にメキシコに関心も高い。先のゴールドカップで6度目の優勝を飾って日本代表も出場するコンフェデレーションカップの出場権を得ているからである。チーム内に問題もあり、U22を主体のチームにコパ・アメリカでの期待は小さいかもしれないが。

 ところが、コパ・アメリカによって最も被害を受けているチームが存在している。ブラジルのサントスFC。コパ・リべルタドーレスを48年振りに獲得し、今冬のクラブ・ワールドカップ決勝でバルセロナと対戦できると信じているが、多くの選手のヨーロッパへの流出、コパ・アメリカにネイマール、ガンソ、エラーノを送り出していて困窮し始めた。コパ・アメリカ後も、FIFA U-20 ワールドカップにベンフィカに移籍予定のダニーロたち3選手が代表に召集されることになっている。ベストメンバーを組めずにブラジル選手権(Campeonato Brasileiro Seria A)を戦うムリシー・ハマーリョ監督には、頭の痛い深刻な問題となっている。シーズン真っ最中のブラジルにとっては、コパ・アメリカが特定のクラブに打撃を受けさせている。

 いずれにしても、組織、戦術は当然としても、個の力で勝負が決まるケースも多い南米の大会には目を離せない。FIFA U-17ワールドカップ、女子のワールドカップの日本代表の快進撃とともに、コパ・アメリカを大いに楽しみたいと思う。

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